前回の記事「潅水システムの流量が「0のまま」になったら」で、流量が「0」のまま動かないときの原因の切り分け方をご紹介しました。
今回は、実際にあったケースです。流量センサーの信号がまったく来ず、流量が「0」のまま。コネクタを抜き差ししても、端子に息を吹きかけても復帰しない——そんな状態のお客様と、電話でやりとりしながら原因を探っていきました。行き着いたのが、コネクタ端子に浮いた青緑色の錆(腐食)による接触不良でした。中の金属が錆びると、そこで電気の通りが悪くなり、センサーの信号が制御盤まで届かなくなります。この記事は、その続きです。
なお、端子そのものは通常なら数年は問題が出にくく、むしろ樹脂やゴムの部分が紫外線で先に傷んでくることのほうが多いです。今回は、濡れ(湿気)が入り込んだことが効いて、端子側に錆が出たケースでした(このあたりは後半の「なぜ錆びるのか」でくわしく触れます)。
錆びが進んでいる場合、いちばん確実な直し方はセンサーやコネクタの交換です。ただ、交換となると部品代も手間もかかります。そこで、交換する前に、まずリーズナブルに接点を復活させられないかを試してみた作業を、写真付きで公開します。
この記事でできること・できないこと
先に正直にお伝えしておきます。
- この記事でできるのは、歯ブラシで軽く錆びを落とし、専用のグリースで保護するという、道具をほとんど使わないお手入れです。うまくいけば、これだけで接触が戻ることがあります。
- ただし、錆びがかなり進んでいる場合は、これでは戻りきらないこともあるかもしれません。そのときは無理をせず、交換をご相談ください。
うまくいけば、専用グリースと歯ブラシ1本で済む方法です。まずはできるところから試してみてください。
こんな症状のとき
- 流量センサーの信号がまったく来ず、流量が「0」のまま動かない
- コネクタを抜き差ししても、息を吹きかけても復帰しない
- コネクタを外して端子を見ると、接点(金属部分)に青緑色の錆・くすみが見える
- 前回の切り分けで、コネクタの接触不良が疑わしいとわかった
流量が「0」のままになる原因を順番に切り分ける手順は、前回の記事でくわしく紹介しています。「コネクタの接触不良が疑わしい」とわかった方は、このままこの記事をお読みください。
コネクタの中で金属の接点が錆びると、そこで電気の通りが悪くなり、センサーが出した信号が制御盤まで届きにくくなります。その結果、タッチパネルの流量がうまく反応しない、ということが起こります。
「信号が来ない=どこかで線が切れた?」と思いがちですが、多くの場合はまず接点を疑います。このケーブルは、中の銅線を覆う被覆と、外からの衝撃に耐える外装の二重構造になっていて、そう簡単には断線しないつくりだからです。だからこそ、まずはコネクタ端子の状態を確認するのが近道です。
なぜ端子が錆びるのか ― 「濡れ」がいちばんの敵です
端子の金属は、通常なら数年は問題が出にくいものです。実際、劣化としてはゴムや樹脂の部分が紫外線でだんだん傷んでくるほうが先に来ることが多く、端子そのものはそう簡単には錆びません。では、なぜ今回は錆びたのか。ポイントは「濡れ(湿気)」です。
- 雨がかかりやすい場所や、ミスト(細霧)で湿度が高くなりやすい環境では、端子に水滴や湿気が入り込むことがあります。
- そうして端子に水気が回ると、金属が腐食して青緑色の錆が出て、接触不良につながります。
つまり、濡れやすい・湿気がこもりやすい場所に取り付いているコネクタほど、この症状が起きやすいということです。設置場所に心当たりがあれば、次の点検のときに一度端子を見てみるとよいかもしれません。
なぜ「専用のグリース」なのか ― グリース選びが一番大事です
このお手入れで用意するものは、たった2つです。使い捨ての歯ブラシ(1本)と、コネクタ用の防湿グリース(電気を通すタイプ)です。

歯ブラシはどこにでもあるものでかまいません。問題はグリース選びで、ここだけは気をつけていただきたいポイントがあります。
「グリースなら家にあるものでいいのでは?」と思われるかもしれませんが、それはおすすめしません。グリースには、電気を通すものと通さないものがあるからです。
- 電気を通さないグリースを使うと逆効果です。接点を絶縁体(電気を通さないもの)で覆ってしまうことになり、かえって通りが悪くなります。
- 溶剤がプラスチックや樹脂を侵すタイプもNGです。ホームセンターで売っている接点復活スプレーの中には、溶剤がシリコン系でないものだと、コネクタの樹脂を傷めてしまうものがあります。そうなると樹脂が割れやすくなり、かえって寿命を縮めてしまいます。「接点復活剤」と書いてあれば何でもいい、ではないのです。
- 選ぶべきは、「電気を通す接点」と「樹脂」の両方を守れる、性質のはっきりしたタイプです。
こうした事情があるので、私たちは性質の分かっている指定品をお客様にお送りするようにしています。今回使ったのは、イチネンケミカルズ NX285 カプラー用潤滑防湿グリース(スプレータイプ)です。グリース状で錆びにくくしつつ電気も通し、接点部分と樹脂の両方を保護できるので、この用途に向いていると思っています。Amazonで購入できます。
| 準備するもの | 内容 |
|---|---|
| 使い捨ての歯ブラシ | 1本。水につけずに、乾いたまま使います |
| コネクタ用 防湿グリース | イチネンケミカルズ NX285 カプラー用潤滑防湿グリース(Amazon)。電気を通す/接点と樹脂の両方を守れるタイプ |
このスプレータイプ、便利なのですが、先端の細いノズルをなくしやすいのが玉にキズです…。そこは仕方ないのかなと思っています。
お手入れの手順
ステップ1:作業前のコネクタを撮っておく
まず、作業を始める前のコネクタの様子を、ケーブル側・センサー側の両方、写真に撮っておくのがおすすめです。元に戻すときの向きの確認にも使えます。

ステップ2:乾いた歯ブラシで、錆び・汚れを軽く落とす
水につけていない乾いた歯ブラシで、接点の表面を軽くこすります。力はほとんど要りません。細かく何回も動かして、表面に乗った錆び・汚れを削り落とすイメージです。
錆びが強くて歯ブラシでは歯が立たない場合もありますが、できる範囲で汚れを落としてください。まずはケーブル側から始めます。

ステップ3:金属ピン(センサー側)は特に慎重に
続いてセンサー側です。センサー側は金属のピン(オス側)が4本出ています。ここは特に注意してください。
歯ブラシでこのピンを曲げてしまうと、コネクタが刺さらなくなり、完全な故障につながります。強い力は絶対に不要です。軽い力で、表面の汚れをなでるように落としてください。

ステップ4:グリースを「薄く」塗る
汚れがざっくり落ちたら、グリースを塗っていきます。ポイントは「薄く」です。
- グリースの細いノズルがあれば、それを使うと塗りやすいです。
- たくさん塗る必要はありません。表面に薄い膜を張るくらいが目標です。
- 私は使い捨ての歯ブラシで、余分なグリースを落とすように動かしながら、薄く塗り込んでいます(歯ブラシをティッシュ代わりに使うイメージ)。

センサー側も同じように塗ります。センサー側は奥まで歯ブラシが届きにくいので、白いグリースがなるべく残らない状態を目指して、広げながら余分を落としていきます。

たくさん塗ったほうが効きそうな気がしますが、逆です。グリースが残りすぎると、そこにホコリが溜まりやすくなり、かえって接触不良の原因になります。「薄く広げる」が最適だと思ってください。
ステップ5:両側がきれいになったら、いよいよ組み戻し
ケーブル側・センサー側の両方のお手入れが終わりました。白いグリースが目立たない状態になっていればOKです。

元に戻すとき ― 切り欠きの位置を合わせる
戻すときは、前回の記事と同じく向き(切り欠きの位置)に注意してください。
- コネクタには位置合わせの切り欠き(出っぱり)があります。センサー側と合うか確認します。
- 位置が合ったら、まっすぐ差し込みます。
- 違和感があるときは、切り欠きがずれている可能性があります。無理に押し込まず、一度抜いて向きを確認してください(無理に差すと破損の原因になります)。
- まっすぐ差し込めたら、抜け止めのナットを時計回りに締めて取り付け完了です。

組み戻したら、もう一度、流量のテストをしてみてください(テストのやり方は前回の記事をご覧ください)。これで流量が反応すれば、接点の復活は成功です。
結果 ― 交換せずに済めば、いちばんお得
歯ブラシと防湿グリースだけで接点の通りが戻ってくれれば、センサーやコネクタを交換せずに済みます。まずはこのお手入れを試してみる価値はあるかな、と思っています。
もし、これをやっても流量が戻らない・反応が安定しない場合は、錆びが接点の奥まで進んでいるか、センサー本体側に原因がある可能性があります。そのときは無理をせず、ご相談ください。
注意点+お手入れのコツ
- 作業の前に、必ず水を止めてから行ってください。コネクタを外すときは水が出ていない状態で。
- 金属ピン(4本)を曲げないこと。これがいちばん大事です。曲げると刺さらなくなり、完全故障につながります。
- グリースは薄く。塗りすぎるとホコリが溜まり、逆に接触不良の原因になります。
- 電気を通す/樹脂を侵さないグリースを選ぶこと。家庭用の一般グリースで代用しないでください。溶剤がシリコン系でない接点復活スプレーは、コネクタの樹脂を傷めることがあるので、性質の分かった製品を使ってください。
- 組み戻すときは切り欠きの向きを合わせて、まっすぐ。無理に押し込まない。
よくある質問(FAQ)
- 信号が来ないのは、ケーブルが断線したからでは?
-
まずは接点(コネクタ端子)を疑うのがおすすめです。このケーブルは、中の銅線を覆う被覆と、外からの衝撃に耐える外装の二重構造になっていて、そう簡単には断線しないつくりだからです。抜き差ししても・息を吹きかけても復帰しない場合は、断線よりも端子の錆・接触不良の可能性が高いので、まず端子の状態を見てください。
- なぜ端子が錆びたのでしょう?
-
いちばんの原因は「濡れ(湿気)」です。端子の金属自体は通常なら数年は問題が出にくいのですが、雨がかかりやすい場所や、ミスト(細霧)などで湿度が高くなりやすい環境だと、端子に水滴や湿気が入り込み、青緑色の錆が出て接触不良につながります。湿気がこもりやすい場所のコネクタほど、この症状が起きやすいです。
- ホームセンターの接点復活スプレーを自分で吹きかけてもいいですか?
-
製品選びに注意してください。接点復活スプレーの中には、溶剤がシリコン系でないものだと、コネクタの樹脂を傷めてしまうものがあります。「接点復活剤」と書いてあれば何でも良いわけではなく、電気を通し・樹脂を侵さない、性質のはっきりした製品を選ぶことが大切です。迷う場合はご相談ください。
- 家にある普通のグリース(潤滑用など)で代用できますか?
-
おすすめしません。電気を通さないグリースだと接点を絶縁してしまい逆効果になりますし、樹脂を侵すタイプだとコネクタの樹脂を傷めることがあります。コネクタ専用の防湿グリース(電気を通すタイプ)を使ってください。
- グリースはたっぷり塗ったほうが効きますか?
-
逆です。塗りすぎると、そこにホコリが溜まって、かえって接触不良の原因になります。薄く膜を張る程度が最適です。
- 歯ブラシでこすって、接点を傷めませんか?
-
乾いた歯ブラシで軽くこする程度なら問題ありません。ただし、センサー側の金属ピン(4本)だけは曲げないよう、特に軽い力で扱ってください。
- これをやっても流量が戻りませんでした。
-
錆びが奥まで進んでいるか、センサー本体側に原因がある可能性があります。その場合はセンサー・コネクタの交換が確実です。無理をせずご相談ください。
- コネクタを戻すとき、うまく刺さりません。
-
切り欠き(位置合わせの出っぱり)の向きがずれている可能性があります。無理に押し込まず、一度抜いて向きを確かめてから、まっすぐ差し込んでください。
自分で作業するのが難しい場合
「錆びがひどくて落ちない」「グリースを塗っても反応が戻らない」「金属ピンを傷めそうで不安」——そんなときは、無理をせずご相談ください。
- 流量センサー・コネクタの交換
- 配線側の確認
- そのほか判断に迷う症状のご相談
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